1結論:大学受験は「どの大学に行きたいか」だけでなく「どんな試験なら勝てるか」を早く考えた方がいい

大学受験になると、まず志望大学を決める。

東大に行きたい。

国公立に行きたい。

早慶に行きたい。

地元の大学に行きたい。

もちろん、それでいい。

ただ、もう一つ早い段階で考えておきたいことがある。

自分は、どんな試験なら点を取りやすいのか。

大学受験は、大学によって要求される能力がかなり違う。

多くの科目を満遍なく仕上げる力が必要な試験もある。

少数科目をかなり高い水準まで伸ばせば戦える試験もある。

暗記量がものをいう科目もあれば、初見の問題を考える力が必要な科目もある。

マーク式が中心の試験もあれば、記述力が重要な試験もある。

だから、単純に「偏差値が高い大学ほど難しい」とだけ考えない方がいい。

自分の能力と試験形式の相性によって、同じ難易度帯でも合格しやすさは変わる。

大学受験では、自分の学力を伸ばすことと同じくらい、自分が勝てる試験を選ぶことも重要だと思う。

そして、この判断はできるだけ早い方がいい。

25教科7科目をやれる人と、やれない人はいる

国公立志望になると、多くの科目を並行して勉強する必要が出てくる。

英語。

国語。

数学。

社会。

理科。

情報。

さらに大学によっては、二次試験用の記述対策も必要になる。

これを問題なく回せる人もいる。

一つの科目に飽きたら別の科目へ移れる。

毎日複数科目を計画的に進められる。

苦手科目も最低限まで引き上げられる。

長期間、広い範囲を管理できる。

こういう人は多科目型と相性がいい。

一方で、そうではない人もいる。

  • 科目を切り替えるたびに集中が途切れる
  • 一度集中すると同じ科目を長くやる方が楽
  • 複数科目の進捗管理が苦手
  • 苦手科目を勉強すると一気にやる気が落ちる
  • 得意科目はかなり伸びるが、苦手科目は何時間やっても伸びにくい
  • 試験範囲が広がるほど頭の中が散らかる

こういう人に、

「国公立を目指すなら全部やりなさい。」

とだけ言っても、うまくいかないことがある。

努力不足とは限らない。

勉強の仕方と本人の特性が合っていない可能性もある。

5教科7科目を高い水準で回せる人は、それ自体が一つの能力だと思う。

全員が同じようにできる前提で受験戦略を作らない方がいい。

3科目数が増えるとスイッチングコストも増える

多科目型で見落とされやすいのが、科目を切り替えるコストだ。

数学をやる。

次に英語。

そのあと日本史。

さらに理科基礎。

科目を変えるたびに、頭の使い方も変わる。

数学では問題を考える。

英語では単語や文法、長文を読む。

社会では大量の知識を思い出す。

これを苦にしない人もいる。

でも、切り替えが苦手な人にとっては、毎回そこに小さな負荷がかかる。

1回の負荷は大したことがなくても、毎日繰り返せば大きい。

だから少数科目型へ移ると急に勉強が進む人もいる。

午前中は英語。

午後は世界史。

夜は国語。

くらいなら回せる。

毎日7科目の進捗を気にする必要もない。

これは「私立の方が簡単」という話ではない。

早慶レベルになれば、一つひとつの科目をかなり高い水準まで持っていく必要がある。

ただし、

広く高く揃える試験と、狭く深く伸ばす試験では要求される能力が違う。

自分がどちらに向いているかは見た方がいい。

4暗記型が得意な人と思考型が得意な人も違う

科目数だけではない。

どんな問題なら点を取りやすいかも人によって違う。

例えば、

大量の知識を覚えるのは比較的苦にならない。

同じ教材を何周もできる。

覚えたことを本番で再現するのが得意。

こういう人なら、英単語や社会の知識を積み上げていく戦略と相性がいい。

一方で、

暗記を延々続けるのは苦痛。

でも、一度仕組みを理解すると応用できる。

初めて見る問題を考えるのは好き。

こういう人なら数学や物理のような科目で強みが出るかもしれない。

もちろん、実際の入試科目はそんなに単純には分けられない。

英語にも思考は必要だし、数学にも暗記すべき解法や知識はある。

それでも、

自分は何をしているときに点数が伸びやすいのか

を知っておく価値は大きい。

「苦手な能力を全部平均まで引き上げる」だけが受験ではない。

自分が得意な処理方法が評価される試験を探す方法もある。

5認知特性は受験期間中に簡単には変わらない

もちろん、人は成長する。

集中力も鍛えられる。

勉強習慣も作れる。

数学が苦手だった人が、勉強して得意になることもある。

だから、高1の成績だけで

「あなたには才能がない。」

と決めつける必要はない。

ただし、大学受験には期限がある。

高校生活は3年間しかない。

その短い期間の中で、

  • 集中の仕方
  • 情報処理の癖
  • 暗記と思考の得手不得手
  • 科目切替への強さ
  • 長期計画の得手不得手

まで根本的に変えるのは簡単ではない。

だから、受験戦略としては、

本人の特性を矯正することだけに時間を使うより、今持っている強みが生きる試験へ寄せる

という考え方も必要だと思う。

例えば数学が本当に苦手な文系志望者がいる。

もちろん数学を勉強して伸ばす道もある。

ただ、高1からかなり時間を使っても数学だけ伸びず、英語と社会は明らかに伸びるなら、

「数学を克服するまで頑張ろう。」

だけではなく、

英語と社会をさらに伸ばして勝てる入試はないか

も考えていい。

受験の目的は、苦手科目を克服することそのものではない。

志望大学に合格することだ。

6高1は「自分の学習特性を調べる期間」にした方がいい

だから、高校1年生では偏差値だけを見るのではなく、自分の勉強の特徴も観察した方がいい。

例えば1年間勉強してみて、

  • 少ない勉強時間でも伸びる科目は何か
  • 時間をかけても伸びにくい科目は何か
  • 暗記と問題演習のどちらが苦にならないか
  • 複数科目を並行しても疲れないか
  • 一つの科目に集中した方が成績が伸びるか
  • 記述式とマーク式のどちらで点を取りやすいか
  • ケアレスミスが多いか
  • 時間制限が厳しい試験で崩れやすいか

を見る。

模試も、単に偏差値を確認して終わりにしない。

自分がどういう問題で失点しているかを見る材料として使う。

そうすると、

「私は数学が苦手。」

より一段細かく、

「公式や基本問題はできるけど、初見の問題で方針を立てるのが苦手。」

「時間をかければ解けるけど、制限時間があると崩れる。」

「計算ミスが多い。」

まで分かる。

ここまで見えると、受験方式との相性も考えやすくなる。

7高1終了から高2前半には大きな受験ルートを決めたい

受験戦略を決めるのが遅いほど、方向転換のコストは高くなる。

例えば文系で、数学がかなり苦手。

英語は得意。

社会も伸びている。

首都圏在住で、私立の学費も家庭として許容できる。

東大や一橋への強いこだわりもない。

この状態なら、高1終了から高2前半くらいで、

国公立型を続けるのか、少数科目へ集中するのか

を一度真剣に考えていい。

なぜなら、選択肢を残すことにもコストがあるからだ。

「一応国公立も受けられるようにしておこう。」

と考えるなら、そのために数学や共通テスト科目へ勉強時間を払い続ける必要がある。

それ自体は悪くない。

ただし、その時間は英語や社会には使えない。

高3になってから、

「やっぱり私立専願にします。」

と切り替えることもできる。

でも、それまでに使った時間は戻らない。

だから、

可能性を残すことが常に安全とは限らない。

早く方針を決めれば、その分だけ得意なルートへ勉強時間を集中できる。

8私立専願が正解なのではなく、何を取って何を捨てるかを決める

ここで誤解してほしくないのは、

「私立専願にした方がいい。」

という話ではないこと。

国公立にも大きなメリットがある。

特に学費は重要だ。

家庭によっては私立へ進学すると数百万円単位で負担が増える。

国公立ブランドを重視する地域や業界もある。

幅広い科目を勉強すること自体にも教育的な価値はある。

だから、国公立型が合っている人ならそのまま狙えばいい。

重要なのは、

自分が何を得るために、何を負担するのかを理解して選ぶこと。

例えば私立専願なら、

  • 得意科目への集中
  • 勉強範囲の縮小
  • 上位私大への一点突破

を取りやすい。

その代わり、

  • 私立の高い学費
  • 国公立という選択肢
  • 一部の受験方式

を捨てる。

国公立型なら、

  • 学費の安さ
  • 国公立という選択肢
  • 幅広い大学への出願可能性

を取れる。

その代わり、

  • 多科目を勉強する負荷
  • 苦手科目にも時間を使う必要
  • 得意科目だけに集中できないこと

を受け入れる。

どちらが正しいではない。

家庭の経済状況と本人の能力特性によって答えは変わる。

9「全科目を頑張る」がその子にとって最善とは限らない

保護者からすると、

「まだ高校1年生なんだから可能性を狭めない方がいい。」

と思うのは自然だ。

特に国公立へ行けば学費も抑えられる。

だから、

「数学もちゃんとやりなさい。」

「理科も捨てない方がいい。」

と言いたくなる。

それ自体は間違っていない。

ただ、本人の能力特性を見ずに、

全科目を最後まで残すことそのものを目的にしない方がいい。

全科目を勉強した結果、どの科目も中途半端になる人もいる。

一方で、得意な3科目へ時間を集中させれば、かなり上の大学へ届く人もいる。

受験生が持っている時間は有限だ。

だから、

「この子は何ができないか。」

だけではなく、

「この子は何なら他の人より伸びるのか。」

を見る。

苦手科目の補修だけに高校3年間を使わない。

これはかなり重要だと思う。

10一斉型の受験指導だけでは相性を拾いにくい

学校や予備校では、ある程度全員に共通したカリキュラムが必要になる。

それは仕方ない。

一人ひとり完全に違う授業を用意することは難しい。

ただ、受験生側までそのカリキュラムを絶対視する必要はない。

全員が同じ授業を受けて、

同じ参考書を使って、

同じ順番で勉強して、

同じ大学群を目指す。

それで伸びる人もいる。

でも、本人の能力特性によっては別のルートの方が効率的なこともある。

だから学校や予備校の授業は利用しつつ、

最終的な受験戦略は本人の得意不得意から個別に考えた方がいい。

何時間勉強したかではなく、どの科目なら点に変わるか。

どの試験なら自分の強みが評価されるか。

そこを見たい。

11結論:大学受験は「苦手を全部直すゲーム」ではない

大学受験で努力は必要だ。

苦手だからといって、何でもすぐ逃げればいいわけでもない。

高1の最初から数学を一問解けなかっただけで、

「自分は私立専願。」

と決めるのも早い。

でも、1年間しっかり勉強した結果、

多科目を並行するのが明らかに苦手。

数学はかなり時間を使っても伸びない。

一方で英語や社会は伸びる。

そこまで分かっているなら、その情報を受験戦略に使った方がいい。

大学受験は、

すべての弱点を克服して万能な受験生になるゲームではない。

自分の限られた能力と時間を使って、合格できる大学を最大化するゲームでもある。

そのためには、

  • 自分が得意な科目を知る
  • 苦手科目の改善コストを知る
  • 科目数への耐性を知る
  • 暗記と思考のどちらが得意か知る
  • 自分が勝てる入試方式を探す
  • 家庭の学費許容度と合わせて受験ルートを決める

ことが必要になる。

そして、この判断は早い方がいい。

高校3年生になってからでは、すでにかなりの勉強時間を使っている。

だから高校1年生は、ただ勉強するだけではなく、自分がどういう試験なら勝てる人間なのかを知る期間にした方がいい。

多科目型が合うなら国公立を狙えばいい。

少数科目型が合うなら、その強みを生かせる大学を探せばいい。

暗記が強いなら、それを使えばいい。

思考が強いなら、それを使えばいい。

自分を受験に合わせるだけではなく、受験の方を自分に合わせる。

大学受験は、高1のうちに「自分が勝てる試験」を見つけた方がいい。