1結論:上に行くほど、勝ち続けるのは難しくなる
子どもが勉強を頑張っている。
中学校では学年上位にいる。
高校受験でも成功して、地域の進学校へ入る。
親からすると、このまま順調に上へ進んでほしいと思うはずだ。
でも、上へ行けば行くほど、同じように優秀だった子どもたちが集まってくる。
中学校では学年上位10%だった子でも、進学校へ行けば真ん中になるかもしれない。
高校でも上位を維持して難関大学へ行けば、今度は全国の進学校で上位だった学生と競争することになる。
そこでも勝って人気企業へ入れば、さらに選抜された人たちの中で評価される。
つまり、子どもの能力が伸び続けていても、比較する集団が強くなれば順位は下がる。
上に行くほど、自分より強い人に囲まれる。
だから、どこかで相対的に「下位」になることは十分あり得る。
これは失敗ではない。
むしろ、上の環境へ進んできたからこそ起きることでもある。
2中学では勝てても、高校では比較相手が変わる
中学生までは、特に公立中学校なら、かなり幅広い学力の子どもが同じ学校にいる。
勉強が得意な子もいる。
普通の子もいる。
勉強がかなり苦手な子もいる。
その中で学年上位に入れば、「自分は勉強ができる側だ」という感覚を持ちやすい。
ところが高校受験をすると、学力によって学校がかなり分かれる。
中学校で学年上位だった子は、同じように中学校で上位だった子が集まる進学校へ進む。
すると、中学校では10位だった子が、高校では100位になることもある。
本人の能力が落ちたわけではない。
むしろ難しい入試を突破し、以前より高い水準の勉強をしている。
それでも順位は落ちる。
環境を上げた結果、比較対象が強くなったからだ。
ここはかなり重要だと思う。
順位が下がったからといって、本人が弱くなったわけではない。
3上位集団へ移るたびに、順位はリセットされる
人生では、環境が変わるたびに競争相手も変わる。
例えば、
- 中学校で学年上位に入る
- 地域の進学校へ進む
- 難関大学へ進む
- 人気企業へ入る
- その会社で昇進競争に入る
というルートを考える。
中学校では地域の同年代との競争だった。
進学校では、中学時代に勉強が得意だった人同士の競争になる。
難関大学では、さらにその中で大学受験に勝った人が集まる。
人気企業では、難関大学の学生も含めて就職活動を突破した人が集まる。
そのたびに、自分の順位は実質的にリセットされる。
だから、一度上位に入ったからといって、その後も上位であり続けられるとは限らない。
一つ上の環境へ移るたびに、もう一度勝たなければならない。
4「上位10%」に居続けるのは思っているより難しい
例えば、中学校で上位10%に入ったとする。
その子が進学校へ行き、そこでも上位10%に入る。
さらに難関大学へ進み、そこでまた上位10%に入る。
就職活動でも人気企業へ入り、会社でも上位評価を取り続ける。
こう考えると、かなり難しいことが分かる。
現実には、学力や能力には相関がある。
中学校で上位だった子は高校でも上位に入りやすいし、難関大学へ行った人は就職活動でも有利になりやすい。
だから、それぞれが完全に独立した競争ではない。
それでも、上へ進むたびに比較対象の水準が上がっていくことは変わらない。
中学校では少し勉強するだけで上位に入れた子でも、進学校では周囲も同じくらい勉強している。
大学受験では、さらに長時間勉強する人が増える。
人気企業へ行けば、学力だけでなくコミュニケーション、仕事の速さ、専門性、体力まで求められる。
勝ち続けるほど、次の競争は難しくなる。
5努力している人だけが集まると、努力だけでは差がつきにくくなる
子どもの頃は、「努力すれば伸びる」と教えられる。
これは基本的には正しい。
勉強時間を増やせば、学力は上がりやすい。
練習すれば、できることも増える。
ただ、上の環境へ進むほど、周囲も努力している。
進学校へ行けば、勉強すること自体は珍しくなくなる。
難関大学を目指す集団では、毎日何時間も勉強する人が普通にいる。
そこでさらに上位へ行こうとすると、「努力しているかどうか」だけでは差がつきにくくなる。
同じくらい努力する人の中で、
- 理解が速い
- 記憶に残りやすい
- 処理速度が速い
- 集中力が続く
- 抽象的な概念を理解しやすい
- 言語や数学への適性が高い
といった個人差も効いてくる。
残酷ではあるが、才能や適性には差がある。
努力で能力を伸ばすことはできても、全員が同じ努力量で同じところまで行けるわけではない。
6才能の差は、上に行くほど見えやすくなる
中学校では、勉強習慣があるだけで大きな差がつくことがある。
授業を聞く。
宿題をやる。
テスト前に勉強する。
これだけでも上位へ行ける子はいる。
だから、その時点では本人も親も「努力すればもっと上へ行ける」と考えやすい。
でも、進学校へ行けば、多くの子がそれをやっている。
そこでさらに上へ行くには、勉強量を増やすだけでなく、学習効率や適性も影響してくる。
これは仕事でも同じだ。
難関大学へ入り、大企業へ入った人たちは、少なくともそれまで何らかの競争を突破してきた人が多い。
その中では、真面目に働くこと自体は差別化になりにくい。
仕事を理解する速さ。
人を動かす力。
営業力。
技術力。
判断力。
ストレスへの強さ。
複数の能力が必要になる。
だから、上の環境へ行くほど、
「頑張っているのに周囲より勝てない」
ということが起こりやすくなる。
7学歴が高ければ、そのまま勝ち組になるわけではない
大学受験までは、人生が比較的一次元に見えやすい。
偏差値が高い。
いい大学へ入る。
ここまで来ると、「これでかなり人生は安泰だ」と感じることもある。
でも、社会人になると競争は急に多次元になる。
例えば会社員として上位に行こうとすれば、
- どの業界へ入るか
- どの会社へ入るか
- どの職種になるか
- どこへ配属されるか
- その仕事への適性があるか
- 評価される成果を出せるか
- 専門性を作れるか
- 昇進できるか
- 必要なら良い転職ができるか
- 健康を維持できるか
といった要素が同時に効いてくる。
いい大学へ入ることは、こうした機会へのアクセスを増やす。
ただし、成功そのものを約束してくれるわけではない。
大学受験で上位だった人でも、社会人では別の能力を求められる。
だから、18歳まで勝っていたからといって、35歳でも同じ順位にいられるとは限らない。
8子どもをずっと上位に置き続けるのは難しい
親は、自分の子どもには成功してほしいと思う。
いい成績を取ってほしい。
いい高校へ行ってほしい。
いい大学へ行ってほしい。
いい会社へ入ってほしい。
できれば会社でも評価されてほしい。
それ自体は自然な願いだと思う。
ただ、すべての段階で上位に居続けることを当然だと考えると、要求水準はかなり高くなる。
中学校で上位。
高校でも上位。
大学でも上位。
就活でも上位。
会社でも上位。
これを何十年も続ける必要があるからだ。
しかも、環境を上げるほど競争相手も強くなる。
だから親は、子どもが一度順位を落としたときに、それを単純な失敗と考えない方がいい。
進学校で下位になったのなら、そもそも進学校へ入れたという事実がある。
難関大学で周囲についていくのが大変なら、その集団自体がかなり強い。
相対順位が下がったことと、本人の能力が下がったことは同じではない。
9だからこそ、中学生までは上位側に入る意味がある
ここまでの話をすると、「それなら順位なんて気にしなくていい」という結論にも見える。
でも、むしろ逆だと思う。
中学生くらいまでは、できれば学年上位に入っておいた方がいい。
中学校までは、まだ幅広い学力の子どもが同じ集団にいる。
そこで上位に入ることで、
- 基礎学力がつく
- 勉強習慣ができる
- 上位高校への選択肢が増える
- 「自分は勉強ができる」という成功体験を持てる
というメリットがある。
高校以降は、学力で集団そのものが分かれていく。
だから相対的な上位を取り続ける難易度は上がる。
中学生までは、学力にしっかり投資して、可能なら「できる側」に入る。
その後は、周囲のレベルが上がることを前提に、自分の得意不得意を見ながら戦う場所を選ぶ。
この方が現実的だと思う。
10どこかで下位になるのは、上へ進んだ証拠でもある
ずっと一番でいられる環境に留まることはできる。
自分より弱い集団にいれば、上位を維持しやすい。
でも、それでは環境を上げる機会を逃すこともある。
進学校へ行けば順位は落ちるかもしれない。
でも、周囲から得られる情報や刺激は増える。
難関大学へ行けば、自分より優秀な人が大量にいるかもしれない。
でも、その人たちと同じ環境にいること自体が新しい機会につながる。
会社でも同じだ。
強い組織に入れば、自分が下位になる可能性は上がる。
その代わり、より大きな仕事や優秀な人と接する機会も増える。
つまり、下位になること自体が悪いわけではない。
上の集団へ移った結果として下位になることと、同じ集団の中で能力が落ちて下位になることは分けて考えた方がいい。
11親は「もっと努力すれば勝てる」と言い続けない方がいい
子どもが上位から外れたとき、親は努力不足を疑いやすい。
もっと勉強すればいい。
もっと塾へ行けばいい。
もっと本気を出せばできる。
そう考えたくなる。
もちろん、本当に努力不足の場合もある。
ただ、周囲も同じくらい努力している集団では、単純に努力量を増やすだけでは順位が変わらないこともある。
そのときは、
どこが得意なのか。
どこに適性があるのか。
どの競争なら上位へ行きやすいのか。
何を捨てて、何に集中するのか。
という戦略が必要になる。
子どもを無限に同じ競争へ押し込むことが正解とは限らない。
上位へ行けなくなったときは、努力量だけではなく、戦う場所も見直した方がいい。
12人生では「どこで勝つか」を選ぶ必要がある
人には得意不得意がある。
勉強は得意でも、人前で話すことが苦手な人もいる。
営業は得意でも、細かい事務処理が苦手な人もいる。
数学は苦手でも、文章を書くことにはかなり強い人もいる。
すべての軸で上位に入れる人はほとんどいない。
だから人生が進むほど、
全部で勝つのではなく、どこで勝つかを選ぶこと
が重要になる。
大学受験なら、自分が勝ちやすい試験方式を選ぶ。
仕事なら、自分の適性が生きる職種を選ぶ。
住む場所や働き方も、自分が重視するものから逆算する。
ずっと同じ競争で上位を取り続けることだけが成功ではない。
自分が強みを出せる場所へ移ることも、立派な攻略になる。
13結論:あなたの子どもは、どこかで「下位」になるかもしれない
中学校で学年上位だった子でも、進学校へ行けば順位は落ちるかもしれない。
進学校で上位だった子でも、難関大学へ行けば普通になるかもしれない。
難関大学でも、人気企業へ入ればさらに強い人たちと競争することになる。
能力が伸び続けていても、比較する集団が強くなれば相対順位は下がる。
だから、子どもがどこかで下位へ回ることは十分あり得る。
むしろ上へ進み続ければ、その可能性は高くなる。
人生では、一度勝てば終わりではない。
環境が変わるたびに比較対象が変わり、新しい競争が始まる。
そして上に行くほど、周囲も努力している。
最後は才能や適性の違いも見えやすくなる。
ずっと上位に居続けることは、思っている以上に難しい。
だから中学生までは、できるだけ学力を伸ばし、「勉強ができる側」に入る。
その先は、上位集団の中で順位が下がることも前提に、自分の得意不得意を見ながら勝てる場所を探していく。
子どもの能力が落ちたから下位になるとは限らない。
上へ進んだからこそ、下位になることもある。