1結論:ITエンジニアは1000万円を狙えるが再現性は高くない
ITエンジニアでも年収1000万円は狙える。
実際、外資系テック、大手Web企業、メガベンチャー、高度な専門職、テックリード、エンジニアリングマネージャーまで行けば、1000万円を超える人は普通にいる。
だからITエンジニアでは1000万円を稼げないという話ではない。
ただ、医師、総合商社、コンサル、金融専門職と比べると、普通にキャリアを積めば1000万円に届くという再現性はそこまで高くない。
Javaが書ける。AWSを使える。Webアプリを作れる。5年、10年経験を積む。
それだけで1000万円になるとは限らない。
1000万円を取るには、会社・専門性・役割のどこかで、普通のエンジニアから一段抜ける必要がある。
2ITエンジニアは会社と市場で年収差が大きい
ITエンジニアと一言で言っても、かなり幅がある。
- SIer
- SES
- 受託開発
- 自社サービス
- 社内SE
- Web系
- 外資テック
- スタートアップ
- フリーランス
全部ITエンジニアだが、給与水準は全然違う。
同じJavaを書いていても、年収400万円、600万円、800万円、1000万円のすべてがあり得る。
つまり「ITエンジニア」という職業を選んだだけでは、高年収市場に入ったことにならない。
ここが医師との大きな違いだ。
医師は医師免許を取った時点でかなり強い収入基盤を持てる。ITエンジニアにはそれがない。
どこで働くかによって、同じようなスキルでも給料が大きく変わる。
2-1普通のITエンジニアの給与水準は1000万円ではない
IT業界には高年収のイメージがあるが、エンジニア全員が高年収というわけではない。
むしろ1000万円を取っている人は、ITエンジニア全体で見ればかなり上の層だ。
だからエンジニアになれば1000万円ではなく、エンジニアになったうえで、さらに上位層に行けば1000万円くらいに考えた方がいい。
これが再現性を下げている。
3技術力だけでは1000万円に届きにくい
ITエンジニアで1000万円を狙うときに厳しいのがこれだ。
技術を身につけても、その技術を使える人が増えると希少性は下がる。
Java、SQL、AWS、Docker、GitHub。もちろん全部大事だ。
でも、その条件を満たす人が市場にたくさんいるなら、企業側が1人だけに1000万円を払う理由は弱くなる。
つまりできることを増やせば、そのまま年収が上がるわけではない。
その能力がどれくらい希少なのか、どれくらい会社に価値を生むのかまで必要になる。
価値の差を数字で示しにくい
営業なら売上1億円、3億円と成果差が見えやすい。トレーダーなら利益、M&Aなら案件成約が数字で見える。
ITエンジニアはそう簡単ではない。
良い設計をした。障害を防いだ。開発速度を上げた。技術的負債を減らした。システムを安定させた。
全部価値がある。
でも、それが会社に何円の利益を生んだのかは見えにくい。
実際には普通のエンジニアの3倍、5倍の価値を出す人もいる。それでも、その差を給与にそのまま反映する仕組みが会社側にないことも多い。
3-1能力差ほど給与差がつかない
年収500万円のエンジニアより明らかに技術力が高く、設計も速く、コード品質も高く、障害対応も強い。
だから年収1500万円になるかというと、なかなかそうはならない。
会社にはエンジニア、シニアエンジニア、リードエンジニアといった等級があり、それぞれ給与レンジが決まっている。
だから個人の能力差ほど給与差がつかない。
突き抜けた能力を持っていても、その会社が1000万円を払わない会社なら1000万円には届かない。
3-2技術専門職だけで届く道は狭い
もちろん技術を徹底的に突き詰めて1000万円という道はある。
- Staff Engineer
- Principal Engineer
- アーキテクト
- 高度なセキュリティ
- AI
- 分散システム
- 大規模インフラ
- データ基盤
ここまで行けば高い報酬がつく。
ただ、そこまで行ける人はかなり限られる。
普通に5年、10年エンジニアをやればStaff Engineerになれるわけではない。
深い専門性、大規模システムの経験、技術的な意思決定、組織への影響力が必要になる。
純粋な技術一本で1000万円を狙うルートはあるが、再現性が高いとは言いにくい。
41000万円へ行く代表ルート
ここは少し皮肉だ。
エンジニアとして年収を上げようとすると、テックリード、プロジェクトリーダー、エンジニアリングマネージャー、VPoE、CTOといった役割が見えてくる。
すると、自分でコードを書くより、設計を決める、人を育てる、プロジェクトを動かす、採用する、経営と話す仕事が増える。
つまりエンジニアとして年収を上げようとすると、エンジニアリングそのものから離れていくことがある。
コードを書くことが好きでエンジニアになったのに、1000万円を目指したら人と予算を管理している。こういうことは普通に起きる。
4-1マネジメントへ行く
一方で、マネジメントまで含めれば1000万円への距離はかなり縮まる。
EM、開発部長、VPoE、CTOまで行けば高年収を狙いやすい。
理由は、自分1人ではなく組織全体の生産性に責任を持つから。
10人のチームを改善する。50人の開発組織を動かす。採用を成功させる。開発速度を上げる。
それなら会社に与える影響も大きく、1000万円以上を払う理由も作りやすい。
ただしこれは、純粋なITエンジニアというより技術が分かるマネージャーに近づいていく。
4-2高く買ってくれる会社へ移る
1000万円を狙うなら、技術力と同じくらい重要なのが会社だ。
むしろ会社の方が大きいこともある。
同じくらいの能力でも、中小SIer、大手SIer、メガベンチャー、外資テックでは給与が全然違う。
だからITエンジニアは、能力が上がれば自然に年収も上がる仕事ではなく、能力を高く買ってくれる会社へ移る必要がある仕事という側面が強い。
年収1000万円のスキルがあっても、年収700万円までしか払わない会社にいれば700万円だ。
4-3外資テックを狙う
ITエンジニアで1000万円を狙うなら、外資系テック企業はかなり強い。
そもそもの報酬水準が高く、株式報酬がある会社もある。専門職キャリアも整っている。
だから管理職にならなくても1000万円以上を狙える可能性が高くなる。
ただし当然、入社難易度も上がる。
技術面接、英語、システム設計、アルゴリズム、実績など求められる水準も高い。
つまり1000万円を払う会社に入れば近い。でもその会社に入るために上位層になる必要がある。
これも再現性を下げる。
メガベンチャーや大手Web企業を狙う
日本企業でも大手Web企業、メガベンチャー、一部の大手IT企業では高い給与を取れる。
技術専門職の上位等級、テックリード、EMまで行けば1000万円も見える。
ただ、ここでも全員が行けるわけではない。
会社に入る競争があり、入ったあとにも評価と昇格競争がある。
つまり会社員として普通に働けば1000万円というより、高給企業に入り、その中でも上へ行くという二段階が必要になることが多い。
独立・フリーランスへ進む
ITエンジニアにはフリーランスというルートもある。
月100万円なら年間1200万円。数字だけ見れば1000万円を超える。
ただし、会社員の年収1000万円とは少し違う。
社会保険、有給、賞与、退職金、営業、待機期間、経費を全部自分で持つ。案件が途切れるリスクもある。
だからフリーランスの売上1000万円=会社員年収1000万円として単純比較しない方がいい。
もちろんうまくいけばさらに稼げるが、安定性は下がる。
5専門性を作る難しさは今後も残る
AI、機械学習、セキュリティ、クラウド、SRE、データエンジニアリング。高単価領域へ行けばいいという話もある。
確かに需要は強い。
ただ、その肩書きをつければ1000万円になるわけではない。
AIエンジニアにもレベル差があるし、クラウドエンジニアにもレベル差がある。AWS資格を持っているだけで1000万円にはならない。
重要なのは、その領域でどこまで難しい問題を解けるか。
ここでも結局、上位層になる必要がある。
5-1技術の陳腐化が速い
ITエンジニアのもうひとつの特徴は、技術が変わる速度がかなり速いことだ。
昔価値が高かった技術が数年後には普通になることもある。
新しいフレームワーク、クラウド、AI、開発ツールがどんどん出てくる。
だから一度専門性を身につければ20年間そのまま高く売れるとは限らない。
医師や弁護士も勉強は必要だが、ITは技術そのものの更新速度がかなり速い。高年収を維持するなら、これについていく必要がある。
5-2AIで普通の実装力の希少性は下がりやすい
今後さらに効いてきそうなのがAIだ。
コード生成、テスト作成、調査、レビュー、設計支援など開発作業のかなり広い範囲でAIが使われ始めている。
だからといってエンジニアが全部いらなくなるとは思わない。
ただ、普通にコードを書けるだけのエンジニアの希少性は下がる可能性がある。
逆に、何を作るべきか決める、複雑なシステムを設計する、事業要件と技術をつなぐ、AIを使って組織全体の生産性を上げるといった上位レイヤーの価値は残りやすい。
1000万円を狙うなら、ますますコードを書く能力だけでは足りなくなる可能性がある。
どこを深めるかの判断も難しい
技術領域はかなり広い。
- フロントエンド
- バックエンド
- モバイル
- インフラ
- クラウド
- データ
- AI
- セキュリティ
何でもできるようになろうとすると広く浅くなりやすい。
一方で、ひとつを深くやりすぎると市場が小さくなることもある。
どこまで広げて、どこを深めるか。
この判断が難しいことも、高年収へのルートを分かりにくくしている。
61000万円への一本道がない
ITエンジニアの面白さでもあり、難しさでもある。
1000万円への道はかなりバラバラだ。
技術を突き詰める
Staff Engineer、Principal Engineer、高度専門家を目指す。
6-1マネジメントへ行く
EM、VPoE、CTOへ進む。
高給企業へ移る
外資テック、メガベンチャーへ転職する。
独立する
フリーランス、受託、起業へ進む。
技術+別能力へ広げる
ITコンサル、プロダクトマネージャー、ソリューションアーキテクト、技術営業へ広げる。
選択肢が多いという意味では強い。
ただ、「このルートを進めば高確率で1000万円」という一本道がない。
これが再現性の低さにつながる。
6-2医師との違い
| 医師 | ITエンジニア | |
|---|---|---|
| 参入障壁 | 医師免許 | ほぼなし |
| 1000万円への再現性 | かなり高い | 低〜中 |
| 普通に経験を積んだ場合 | 1000万円が見えやすい | 1000万円未満で止まることも多い |
| 会社による給与差 | 比較的小さい | かなり大きい |
| 専門職のまま1000万円 | 狙いやすい | 上位層なら可能 |
| 独立 | 開業 | フリーランス・起業 |
| 技術の陳腐化 | 比較的緩やか | 速い |
| 最大の強み | 高い下限 | 入りやすさと選択肢の多さ |
医師は、なるまでが難しく、その後は強い。
ITエンジニアは、なるのは比較的簡単だが、その後に差がつく。
この違いだ。
コンサルとの違い
コンサルなら、コンサルタント、シニア、マネージャーという比較的分かりやすい昇進ルートがある。
マネージャーになれば1000万円という会社も多い。
ITエンジニアは、会社によってキャリアラダーが全然違う。
技術専門職で上がれる会社もあれば、管理職にならないと上がれない会社もあり、そもそも1000万円の等級がほぼない会社もある。
だから同じ能力でも所属企業によってゴールが変わる。
これも難しい。
7それでもITエンジニアは高年収を狙う仕事として強い
そこまでではない。
むしろ強みもかなりある。
参入障壁が低く、医学部へ行く必要も国家資格もない。何歳からでもある程度始められ、転職市場も大きい。リモートワークとも相性がよく、海外企業にも行けるし独立もできる。
つまり入口の広さに対して上限がかなり高い。
これは大きな魅力だ。
高校生の時点で医学部を選ばなかったらほぼ終わり、という仕事ではない。20代後半や30代からでもキャリアチェンジできるケースがある。
1000万円への再現性は高くないが、挑戦できる人の範囲はかなり広い。
ローリスクで1000万円ではない
ITエンジニアを「手堅く1000万円」と表現するのは少し違う。
近いのは、比較的入りやすい代わりに、1000万円を取るにはその後の競争が必要な仕事。
なるまでのハードルは低い。
でもそこから高給企業へ行く、専門性を作る、リードする、マネジメントする、独立するなど、どこかで抜ける必要がある。
入口が広い分、出口ではかなり差がつく。
7-1技術力×会社×役割で考える
ITエンジニアで1000万円を狙うなら、技術力だけでは足りない。
見るべきなのは、どの会社にいるか、どの市場にいるか、どんな役割を持っているか。
ものすごく技術力が高くても、給与水準の低い会社、事業利益の小さい会社、評価制度の弱い会社にいれば年収は上がりにくい。
逆に技術力が十分高く、事業理解もあり、チームも動かせて、高給企業にいるなら1000万円はかなり近くなる。
つまり技術力×会社×役割で考えた方がいい。
8まとめ
ITエンジニアは、年収1000万円を狙える仕事だ。
ただし、年収1000万円を手堅く狙える仕事とは言いにくい。
普通にプログラミングを覚え、数年経験を積むだけで1000万円になるわけではない。
参入しやすい分、人も多く、普通にできることの希少性は下がりやすい。技術力の差が売上のように数字で見えにくく、能力差ほど給与差もつきにくい。
だから1000万円を取るなら、外資テック、高給Web企業、高度な専門職、Staff Engineer、EM、フリーランスなど、どこかで普通のエンジニアから抜ける必要がある。
そして一番難しいのは、その抜け方が一つではないことだ。
医師なら医師免許、コンサルならマネージャーという分かりやすいルートがある。
ITエンジニアは、自分で技術を極めるのか、人を動かすのか、会社を変えるのか、独立するのかを選ばないといけない。
だから1000万円の上限は十分ある。でもそこへ届く再現性は意外と低い。
それでも、資格なしでキャリア途中から参入でき、転職市場も大きく、海外にも行けて、働く場所も選びやすい。
1000万円が約束された仕事ではない。でも、自分で上へ抜ける余地がかなり残されている仕事。
ITエンジニアは、そのくらいの位置づけがちょうどいいと思う。